2024/11/09
『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』Erasmus Brosdau監督と制作スタッフによる特別インタビュー記事公開!
「CGWORLD 2024年12月号 vol.316」にて「ガンダムCGの変遷と最前線」特集として、進化し続けるガンダムCGの変遷をたどり、『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』の制作の舞台裏を大特集。
今回は、監督のErasmus Brosdau、アニメーションプロデューサー/音響監督・由良浩明(SAFEHOUSE)、シネマティックアーティストスーパーバイザー・中原さとみ(SAFEHOUSE )、エンバイロンメント&モデリングスーパーバイザー・鈴木卓矢(SAFEHOUSE)、ディレクター・オブ・フォトグラフィ・笠岡淳平による、スペシャルインタビューの様子をお届けします!
―リアルな描写を取り入れた『ガンダム』をつくる
CGWORLD(以下、CGW):ガンダムシリーズのフォトリアルな長尺フル3D作品の制作は、『MS IGLOO』シリーズ以来、久々のことだと思います。本作を監督するにあたり、どんなリサーチをしたのか教えてください。
Erasmus Brosdau氏(以下、Brosdau):過去に制作された数多くのガンダムシリーズを見返しました。その中で、本作が目指すべき世界観に一番近いと感じたのは『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』(以下、『08小隊』)でした。ガンダムシリーズ以外だと、ロシア映画の『ホワイトタイガー ナチス極秘戦車・宿命の砲火』(2012)や、アメリカ映画の『フューリー』(2014)などの世界観も参考にしています。こういったリアルな描写を取り入れた『ガンダム』をつくりたいという思いがあったからです。
CGW:いずれも戦車が活躍する映画ですね。ちなみに、Brosdau監督が最初に観たガンダムシリーズの作品は何ですか?
Brosdau:『ガンダム』とのファーストコンタクトは私が15歳のときでした。当時も私はドイツに住んでいて、まだ身近にインターネット環境はなかったのですが、近所にコミックストアができたのです。そこでは日本の作品も扱っており、ガンプラが売られていました。最初はそれが何なのかわからなかったのですが、カッコ良いから買ってみたのです。接着剤がなくても組み立てられることに驚いたのを、よく覚えています。それから何年か経った後、私がつくったガンプラは『機動戦士Vガンダム』のヴィクトリーガンダムだったことを知りました。
鈴木卓矢氏(以下、鈴木):私もガンプラは子どもの頃から何体もつくっていました。まさか大人になって、エンバイロンメント(背景)&モデリングスーパーバイザー(以下、SV)としてガンダムをつくれる日がくるとはまったく予想しておらず、嬉しかったです。
中原さとみ氏(以下、中原):私もシネマティックアーティストSVとして参加できるとわかったときは嬉しかったです。私の場合は、『新機動戦記ガンダムW』の再放送で初めてガンダムを観て、すごくハマりました。それで興味が湧いたので、『機動戦士ガンダム』、『機動戦士Ζガンダム』、『∀ガンダム』などを再放送や動画配信で観ていました。
由良浩明氏(以下、由良):私も『08小隊』が大好きなので、本作のアニメーションプロデューサーと音響監督を務める機会をいただけて光栄でした。笠岡さんはディレクター・オブ・フォトグラフィとして本作に参加することが決まった後、当時まだ制作中だった『閃光のハサウェイ』を教材にして、SAFEHOUSEのスタッフに向けてアニメの演出の基礎を解説してくださいましたね。私たちはアニメの演出経験が少なかったので、すごく勉強になりました。
笠岡淳平氏(以下、笠岡):基本的な視線誘導のやり方や、レイアウトのとり方、上手・下手の置き方など、作画アニメの『ガンダム』の演出において歴代の監督や演出が気を配ってきたことを、イメージのすり合わせを兼ねてお話させていただきました。
由良:BNFの小形尚弘さん(エグゼクティブプロデューサー)も、「ガンダムEXの怖さやスケール感をしっかり表現したいから、『閃光のハサウェイ』を観てほしい」と仰っていたので、笠岡さんの解説に助けられました。
―全話同時進行でつくり何度もワークフローを見直した
CGW:本作のワークフローについてもお聞かせください。
由良:脚本はBNFやGavin Hignightさんにお任せしていましたが、私たちは少人数のチームなので、つくれるアセットの数には限界があります。例えば、MSやキャラクターが無限に出てくるようなシーンは避けてほしいといったお願いはしていました。主人公のイリヤ・ソラリを元ヴァイオリニストにしたのも、私自身がヴァイオリニストだからなのです。私だったら、ノーギャラでソラリがヴァイオリンを弾くシーンのモーションアクターができますからね(笑)
ソラリがヴァイオリンを弾くシーンのみ、由良氏がモーションアクターを務めている
Brosdau:脚本制作と並行して、ドイツチームがパイロット映像をつくり、MayaとUE
を用いたワークフローの検証や、ルックデベロップメント(以下、ルックデヴ)を行いました。この段階では本作用のアセットが未完成だったので、制作途中のアセットや、BNFからご提供いただいた『THE ORIGIN』などの既存アセット、市販アセットを使っています。
笠岡:パイロット映像でつくったシーンは後日全部つくり直しましたが、Brosdau監督が
つくった空気感は本編に継承されています。
鈴木:そのシーンデータを2021年初頭に日本チームの全員に共有してもらい、2週間ほどかけて本作でのUEの使い方を勉強しました。その後、先行して第1話の制作に着手していたドイツチームの後を追うかたちで、日本チームは第2話以降の制作を始めました。
Brosdau:約2時間におよぶ長尺映像をUEによるリアルタイムレンダリングでつくるという挑戦は、おそらく世界初だったと思います。当初想定していた通りに進行できず、ワークフローを見直したり、工程を遡ってやり直したりすることも多々あったので、実際のところは、第1話をつくりながらR&Dをしていたというのが実情でした。私たちは少人数のチームだったので、全員がかなりフレキシブルに動いていました。
中原:試行錯誤を経て本作のワークフローが確立したのは、第5話の制作が本格化してからでした。ただ、もし第7話があったら、さらにワークフローが進化していたかもしれません。そのくらい何度もワークフローを見直しました。例えば、第2話までは海外スタイルのストーリーボードをつくっていたのですが、それだと求めている情報が描かれていないと笠岡さんから指摘され、最終的には日本のアニメ制作のやり方に則り、絵コンテ発注、ラフコンテ、コンテチェック、清書という手順をふんで詳細を詰めるようになりました。
笠岡:第3話以降の絵コンテは新井 陽次郎さん、第6話は小原秀一さんに描いていただきました。絵コンテは、その名が示す通りカット同士のContinuity(連続性)を伝えるものなのです。しかし本作のストーリーボードはカッコ良い決めのショットが並んでいるだけで、それがどうつながるのかという情報は描かれていませんでした。レイアウトの参考にはなりますが、各カットの動きをつくり、それをつないで映像で物語を伝える際には、別種の情報が必要なのです。日本のアニメの絵コンテは、そこに特化したものなのだと改めて感じました。だから、定石の手順をふんで絵コンテを発注した方が、やり直しを少なくできるのではと提案させていただきました。
CGW:第2話以降の制作は、日本チームが担当したのでしょうか?
中原:第1話と第6話はドイツチーム、それ以外は日本チームが主導しつつ、お互いに手伝っています。全話同時進行でつくったので、シネマティックアーティストはOKが出たシーンからプリビズをつくっていきました。
笠岡:全6話の脚本は最初から最後までひとつのドラマツルギーでつながっているので、「最後をこうするのであれば、最初はこのようにしよう」という感じで、全体のバランスを見ながら十全に修正を重ねました。それと並行して、「ドラマが変わっても、場所は変わらないだろう」という見極めができたシーンから、プリビズや背景の制作に着手していただきました。
全容は是非、「CGWORLD 2024年12月号 vol.316」をチェックしてください!
https://cgworld.jp/magazine/cgw316.html