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2024/12/07

『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』ゲームエンジンで作る「アニメーション」や「エフェクト」について制作スタッフからの特別インタビューが到着!

「CGWORLD 2024年12月号 vol.316」にて「ガンダムCGの変遷と最前線」特集として、進化し続けるガンダムCGの変遷をたどり、『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』の制作の舞台裏を大特集。

今回は、本作のザクⅡ F型やガンダムEXなど、Unreal Engine 5で制作されたこだわりがつまったモビルスーツの「アニメーション」そして、「エフェクト」ついて、アニメーションスーパーバイザー・Ray Hsu氏(ANIMGURU)、シネマティックアーティスト・慶徳翔平氏(SAFEHOUSE)による、スペシャルインタビューの様子をお届けします。





アニメーション│ANIMATION

―ザクII F型は兵器、ガンダムEXはアスリートだと思って表現する
『復讐のレクイエム』のMSと戦車などのメカのアニメーションは台湾在住のRay Hsu氏のチームが担当しており、2021年7月頃から3人で作業を開始した後、ピーク時には7人まで増えた。Hsu氏はANIMGURUという台湾のアニメーションスタジオのCEOを務めつつ、SAFEHOUSEのアニメーションSVも担っている。加えて作業開始から約半年間は、アメリカ在住の小池洋平氏もSVとして参加しており、第1話BパートのザクII F型とガンダムEXの戦闘シーンの制作を通して、本作におけるMSの動きを提案した。「作業開始時点では各話のレイアウトが決まっていなかったので、ザクII F型の歩き、ふり返り、膝立ちなどの汎用アニメーションを制作しながら、動きの方向性を探りました。人間と同じ動きはしませんが、無機質なロボットの動きというわけでもないので、ガンダムシリーズの様々な既存作品や、巨大ロボットが登場する『パシフィック・リム』などのハリウッド映画を観て、ベストの着地点を考えました。本作のザクII F型の全高は18m弱もありますが、『パシフィック・リム』のジプシー・デンジャーは79mですから、それよりは軽快な動きが可能です。『ガンダム』ファンの納得が得られて、本作のリアルなルックにもフィットする動きを、Brosdau監督や、笠岡さん、小池さんと一緒に話し合いました」(Hsu氏)。

本作はジオン兵のソラリの物語なので、ザクII F型の動きが本作のアニメーションの土台となった。ガンダムEXの動きには、ザクII F型を明らかに凌駕する速さや怖さを表現しつつ、本作のリアリティラインからは外れないバランスが求められた。第1話Bパートの制作時には、「ザクII F型は兵器という認識で問題ないですが、ガンダムEXはアスリートだと思って表現してください」というフィードバックが笠岡氏から出された。そのため第1話のガンダムEXは、カメラが追いきれないほどのスピードで、目だけを赤く光らせながら戦場の暗闇の中を飛び回る、不気味な存在として表現されることになった。


ザクII F型の汎用アニメーションと、第1話 ガンダムEXのカット=
ザクII F型のA D 歩きと、E H ふり返りの汎用アニメーション。Brosdau監督や笠岡氏によるMSの動きのチェック時には、巨大な質量が移動している重量感が特に重視された


第1話にて、ガンダムEXがI ~ K ザクII F型に向かって大きくジャンプするカットと、L ~ N ビーム・サーベルを振り下ろすカット。I N は完成映像で、それ以外は途中テイクの映像。圧倒的な速さと怖さを表現しつつ、リアリティのある重量感も伝える、絶妙なバランスの動きが求められた


エフェクト│EFFECT

―現実には存在しないビームとそれによる破壊が一番難航した
『復讐のレクイエム』のエフェクト制作は、2022年6月頃から開始された。「本作のエフェクトはUE用の市販アセットも活用しており、シネマティックアーティストが配置しています。ただしそれらはゲーム用に最適化されたものなので、そのまま映像で使うには粗すぎる、スプライト(2Dの連番テクスチャ)が目立つといった問題がありました。そのためパラメータの値を上げるなどの調整を施しています。市販アセットでは対応できないビーム表現、巨大な爆発などは、ドイツ、あるいは日本のエフェクト担当者が制作しています」と慶徳翔平氏(シネマティックアーティスト)は語った。ドイツの担当者はBrosdau監督と監督の兄であるBenjamin Brosdau氏、日本の担当者は慶徳氏とフリーランスの渡部智也氏だった。
慶徳氏はこれまでHoudiniをメインで使っており、UEのNiagaraを使うのはほぼ初めてだった。「私が最初に手がけたのは、ガンダムEXのビーム・サーベルです。そもそもビームは何でできているのか、どうやって表現するのかなどをBrosdau監督や、笠岡さん、山根さんと相談しながら試作をくり返しました。プリレンダリングの映像制作であればボリュームで表現するのですが、UEを用いた本作ではパーティクル以外の選択肢がなかったので、密度の高い根元は流体の連番テクスチャを併用し、どの角度から見ても成立するように仕上げています」(慶徳氏)。本作のエフェクト制作では、現実には存在しないビーム・サーベルや、ビーム・ライフルの表現が一番難航し、それらによって破壊されるビルやMSなどの表現も苦戦した。「山根さんからのフィードバックは毎回すごく参考になりました。戦地で記録された写真などをリファレンスとして提供してくださったので、ビーム・ライフルによるビルの溶解表現や、ザク・マシンガンが61式戦車に着弾したときの弾痕の表現などは、それらを参考にしています。どうやったら、巨大なMSによるスケールの大きな破壊や爆発をリアルに表現できるのか、時間をかけて試行錯誤しました」(慶徳氏)。


ビーム・サーベルの試作の変遷=


A:一番最初にBrosdau監督が提示したビーム・サーベルのイメージ
B ~ E:Brosdau監督が追加で提示したビーム・サーベル出現時のアイデアと、F ~ J それを基にした出現から消失までの試作映像。




K ~ O:同じく、試作映像の別案。「根元からエネルギーがV字型に出力した後、サーベルの形に収束するアイデアをBrosdau監督からいただきました。面白かったのですが、別の角度から映したときに成立しないという理由でボツになりました」(慶徳氏)
P:完成したビーム・サーベル。高出力の根元ほど青くなっている


Q:第2話で、ビーム・サーベルに貫かれるグフカスタムのカットの完成映像


全容は是非、「CGWORLD 2024年12月号 vol.316」を是非チェックしてください!
https://cgworld.jp/magazine/cgw316.html